大阪高等裁判所 昭和24年(ネ)393号 判決
控訴人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対してなした換地予定地指定(土地所有者米本忠夫、借地権者卜部甚次郎、従前の土地和歌山市雑賀町二番地の二宅地三五坪七合五勺、換地予定地町名街区番号二二の内借地分として二三坪二合五勺、但しその位置は原判決末尾添村図面中卜の文字で示した部分。)中換地予定地を前記図面中杢の文字で表示した部分に変更する。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、控訴人において、
一、訴外金岩は特別都市計画法施行令第四五条所定の届出をしていないから換地交付を受け得ない者であり、その予定地の指定も受け得ない筈であつて、昭和二三年三月二七日まで本件宅地上に家屋を建築して居らず、同日及び同年六月二〇日前記図面中金岩の文字で示された部分に違法な建築を始め、当局から中止命令を受けて居り、現在まで右建物で何等営業して居らず、住宅は別にあり、昭和二三年三月上旬借地権を売る旨の新聞広告及び現場掲示をしている。しかるに被控訴人のなした指定は、このように保護される資格のない金岩を特別に保護したものであつて、行政権の濫用であり、違法である。
二、控訴人は利害関係人中最も早く営業を始め、戦災復興の先頭に立つた者であるのに、復興を目的とする特別都市計画法によつて不利益を蒙ることは法の目的に反する。
三、杢、金岩、山田等の家屋は移転するのに大した費用はかゝらないから順送りに東え移転さすのが適当である。
と述べ、被控訴人において、
訴外金岩に対しては被控訴人は換地予定地の指定をして居らず、同人の借地は地主米本に対する換地予定地として指定したものである。
と述べた。(各立証省略)
三、理 由
控訴人が肩書地の通称ぶらくり丁通繁華街に面して店舗を構え眼鏡商を営んで来たこと、その敷地は米本忠夫から賃借したものであること、右敷地が特別都市計画法による区画整理のため幹線道路になり、東部において間口四尺を残すのみとなること、及び被控訴人が昭和二三年九月一五日控訴人に対しその主張のような換地予定地指定の通知書を交付したことは当事者間に争がない。控訴人は右指定が控訴人を繁華街から客足の少い土地に追いやるもので、控訴人の営業を因難にするのみならず、控訴人の東隣の三営業者に従前通り繁華街に面した換地を与えたのに比べ公平を失し、都市計画において準用すべき耕地整理法第三〇条第一項に違反すると主張するのでしらべてみるに、本件都市計画により、道路となる控訴人家屋敷地の残り間口四尺の部分は、独立の利用価値が乏しいから、隣接者に割当てることは正当であり、そうすると控訴人はとにかくどこかに移転しなければならない訳であつて、そこで被控訴人の指定した換地予定地について考えるに、原審並びに当審の検証の結果と当審証人志津野富雄の証言とを綜合すると、右予定地は繁華街と幹線道路との街角から約八間程幹線道路を南に入つた所であり、繁華街になるべく近く、できるだけ控訴人の利益を慮つたものと認められ、繁華街に面する土地には及ばないにしても、この程度ならば著しく不当とは云えないし、控訴人が戦災後現在の場所で率先開業し復興の先頭に立つたからと云つても、その故にこの換地が法の目的に反するものとはなし難い。控訴人は東隣の方え一軒順送りに移転するのが正当だと主張するが、これは独自の意見にすぎず、そうしなければならない法令上の根拠は何もないから、この主張は採用し難い。
次に訴外杢が幹線道路開通の結果街角の位置を占めることになるのも、又訴外山田が依然繁華街に残るのも、自然の成行に過ぎず、そのために控訴人に対する右指定が違法であるとは云えない。
訴外金岩に至つては、被控訴人はこれに対して換地予定地の指定をして居らず金岩の借地は地主米本に対する換地予定地として指定したものであることは、当審証人志津野富雄の証言により明らかであるから、金岩に関する諸事情にもとずく控訴人の主張は採用の限ではない。
以上によつて本訴請求の理由のない事は明らかであるから、これを失当として棄却した原判決は相当である。
よつて民訴第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 吉村正道 林平八郎 大田外一)